■ 電気工学科における創造教育
− ワンチップマイコン(PIC)を利用した電子機器の設計製作 −

1.目的
 本校の電気工学科では,既に実験実習において,ワイヤレスマイクの作製,トランジスタ増幅回路の設計・製作,集積回路製造などのアナログ電子回路および半導体素子についての,ものづくり教育が長年に亘って行われているが,近年のデジタルシステムの急速な拡大に対応するものづくり教育の確立が急務となってきている.デジタルシステムは,動作が体感できるレベルの機器を初学者が設計・製作するのは難しく,また簡単な実験回路では学習の動機づけとはなりにくい.そこで,プログラムによる機能実現の手軽さと,部品感覚で実装できる組み込み用ワンチップマイコン(PIC)に着目し,これと様々な機能を持ったモジュール部品との組み合わせによる,実用的な電子機器の設計・製作によるデジタルシステム設計・製作の導入教育を試みることとした.

2.実施計画
平成12年度より開始された創造実習(前期・後期2時間)の後期からより「ワンチップマイコン(PIC)を利用した電子機器の設計製作」をテーマに取り入れた.2−3名を1班として,1課題の製作を行うこととし,以下の手順でおこなった.
 (1) ワンチップマイコン(PIC)を用いた電子機器の製作例の紹介
 (2) PICの概要説明
 (3) 製作テーマの探索(どのような機能の機器を実現するか)
 (4) PICについての学習
 (5) 製作物の仕様決定および設計のための資料収集
 (6) ハードウェア,ソフトウェアの設計・試作
 (7) 性能の検討と設計の見直し,改良.
 なお,1名の教官が同時に複数班を指導する必要があるため,特に(4)PICについての学習,では自学・自習ができる教材として「PICトレーニングセット: (株)マイクロアプリケーションラボラトリ製」を導入して用いた.

3.成果
 平成12年度後期から平成14年度前期までの2年間で,延べ23名(10班)の学生が本テーマの実習を行った.製作物は (1)電子オルゴール,(2)サーボ機構ロボットアーム,(3)文字書きロボット(2種),(4)液晶表示タイマー,(5)インライン文字表示装置,(6)光追従走行ロボット,(7)拍手応答アラーム,(8)相撲ロボット(2台),(9)音源追尾ロボット等を完成させた.成果発表会およびその準備も含めて,延べ30〜40時間の実習で完成品を作製できることが示され,少ない部品点数で”実際に動く”機器が製作できることに,製作した学生のみならず発表会を聴講した多くの学生が驚きと興味を抱いたようであった.このことから,デジタルシステムにたいするハードルを下げるというデジタルシステム設計・製作の導入教育として有効であるとともに,機能実現という目的から学習していく体験的学習法の教材としても非常に有効であることが確認できた.


PICトレーニングキットによる学習風景

音源追尾ロボットの製作風景

拍手応答アラーム(下)とそのテスト風景(上)

走行性ロボット(左)と
    そのテスト風景(右)

相撲ロボットの対戦

文字書きロボットの文化祭での実演風景

2年間の実習で製作された作品群